脳ドック
脳ドック
脳の病気は、突然発症し一瞬にして命が奪われたり、言語障害や手足の麻痺などの重い後遺症をもたらして、人生を大きく変えてしまうことがあります。代表的なものとして、脳卒中と脳腫瘍があります。脳卒中は、発症後に治療を行っても、手遅れとなることが少なくありません。発症前から動脈瘤や血管狭窄といった脳血管病変の有無を評価し、必要に応じて予防的な治療を行っていくことが最善の選択と言えます。また脳腫瘍に関しても、腫瘍が小さく無症状なうちに発見することで、治療選択肢の幅は広がります。
しかし、一般的な健康診断や人間ドックには脳の画像検査が含まれていないため、普段から健康診断を受けているにもかかわらず、脳の病気で突然倒れるというケースが少なくありません。
脳ドックは、脳に特化した健康診断で、こうした異常を早期に発見し、危険因子を除去するためのアドバイスなどを行い、脳の健康を維持することを目的としています。
脳疾患は40歳を過ぎた頃からリスクが高まり、自覚症状が全くないまま突然起こることがあります。40歳を過ぎたら、自覚症状がなくても年に一度は脳ドックを受け、自分の脳の状態を確認しておくと安心です。肥満、高血圧、糖尿病、脂質異常症がある方や、慢性的な頭痛に悩んでいる方、ご家族に脳卒中や脳腫瘍を発症した方がいる場合は、特に脳ドックの受診をおすすめします。
当院の脳ドックでは、異常の早期発見に必要な解像度を確保するため、磁場の強い1.5テスラ(T)のMRI装置を使用しています。さらに高感度コイルやノイズ低減技術、静音技術といった先進技術を組み合わせることで、診断精度を保ちつつ患者様の負担を軽減するよう努めています。また、当院の脳ドックでは、放射線診断専門医による遠隔画像診断支援も取り入れ、より精度の高い診断を行っています。
最新の統計によると、認知症と軽度認知障害(MCI)の合計患者数は1000万人を超え、2050年には1200万人に達すると予測されています。また、65歳以上の約15%がMCIであるとのデータもあります。
一般的なMRI検査では、認知症の早期発見は難しいとされていますが、当院の脳ドックでは、将来の認知症リスクを評価し、早期発見を目指す予防コースをご用意しています。
高齢化が進む現代社会では、認知症予防の重要性がますます高まっています。
認知症で最多のアルツハイマー病は、記憶や思考、判断力に影響を与える進行性の病気であり、症状が進むと日常生活にも大きな支障をきたします。これまで有効な治療法が少なく、病気の進行を食い止めるのは難しいとされてきましたが、2023年に画期的な新薬「レカネマブ」が認可されました。レカネマブは、アルツハイマー病の原因の一つとされる「アミロイドβ」というタンパク質を脳から除去し、病気の進行を抑える効果が期待されています。
しかし、この薬が効果を発揮するのは、アルツハイマー病の早期段階、つまり軽度認知障害(MCI)や軽度の認知症に限られます。具体的には、MMSE(簡易認知機能評価)で22点以上、CDR(認知症重症度評価)で0.5または1という、日常生活は自立しているものの、軽い認知機能障害が見られる段階が目安となります。症状が中等度以上に進行してしまうと、レカネマブの効果は十分には得られません。早期発見が鍵となる理由がここにあります。
記憶や認知機能の低下がまだ軽度な段階で異常を見つけ、早めに対処することが、この画期的な治療薬の恩恵を受けるために重要であり、その一つの答えとなるのが認知症予防ドックです。
MRIによる脳萎縮の評価や認知機能検査を定期的に行うことで、物忘れを自覚する前から異常を発見することが期待できます。アルツハイマー病の場合には、レカネマブなどによる治療で病気の進行を大幅に遅らせられる可能性があります。また、アルツハイマー病だけでなく、血管性認知症や治療可能な認知症(慢性硬膜下血腫や正常圧水頭症など)も早期に発見することができ、それぞれ適切な治療が可能です。
認知症予防ドックは、認知症の治療を適切なタイミングで開始するための理想的な手段です。認知症発症リスクを減らし、健康的で充実した老後を目指しましょう。
MRI検査は脳の構造を視覚化し、形態の変化を確認するのに優れています。しかし、アルツハイマー病などの一部の病気では、MRIで異常が見つかる前に体内の物質に変化が起こることがあります。このような物質は「バイオマーカー」と呼ばれます。
バイオマーカー検査(採血した血液中のタンパク質などの測定)は、MRIでは異常がまだ確認できない早期段階から、認知症リスクの高い人を特定できる可能性があります。
MRIとバイオマーカー検査を組み合わせることで診断の精度が高まり、早期治療の機会を逃さないようにすることが可能になります。
当院での脳ドックは以下の4コースになります。
症状のない脳梗塞や微小脳出血、
スタンダードコースの内容に加えて、
スタンダードコースの内容に加えて、脳萎縮の程度、
脳卒中予防コースと認知症予防コースの内容を合わせたコースです。
アルツハイマー病の原因物質の一つとされるアミロイドβタンパクに関連するタンパク質を調べることで、現在のMCI(認知症の前段階)の可能性と将来のリスクを判定する検査です。
当院では専門医(脳神経外科専門医・認知症専門医)がMRI画像を確認しています。MRIは画像診断の正確性が非常に重要であり、可能であれば複数の医師による確認が推奨されています。放射線診断専門医の支援を取り入れることで、より精度の高い診断が可能になります。
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